大正時代(その1)
1・同志社女子大学 ジェームズ館 (国登録有形文化財) -京都市上京区烏丸通今出川東)
1913(大正2)年、関西建築界の父と
言われた武田五一の設計による赤煉瓦
積みに花崗岩の白い水平ラインを配したデザインである。
栄光館を中心にこのジェームズ館と
清和館(現存せず)が左右対称に並んで
いた。
2・京都大学 文学部陳列館 (国登録有形文化財) -京都市左京区吉田本町-
1914(大正4)年、煉瓦造り2階建てで京大営繕課の
山本治兵衛と永瀬狂三の両氏が設計した。
京都帝大拡張期の代表的建物といわれており、ブロークンペディメント(切妻屋根破風の西洋版)や楕円形窓などネオ・バロック様式を基調とした建物である。
陳列館としての記念碑的性格を持っている。
3・京都大学 農学部表門および門衛所 (国登録有形文化財) -左京区北白川追分町-
1924(大正13)年、森田慶一助教授が設計した建物で放射状のアーチを配し、分離派建築会の表現主義的作風が用いられているという。
ドイツ表現派のモチーフを採用しつつ、日本瓦を載せ
全体に品格あるデザインといわれている。
4・京都大学 楽友会館 (国登録有形文化財) -左京区吉田近衛町-
京大創立25周年記念同窓会館。
1925(大正14)年、上記農学部表門および守衛所に
続く森田助教授の作品。
鉄筋コンクリート造り2階建てで、スパニッシュ様式を
採用しているようで、入口のY字型の柱や丸屋根の庇には分離派風の表現主義的意匠が見られるという。
2010年に改装され、会議室や喫茶食堂を備えた会館として再生された。
5・京都大学 基督教青年会館 (国登録有形文化財) -京都市左京区吉田牛ノ宮町-
1913(大正2)年、米人建築家W.M.ヴォーリズの初期の作品といわれている。
旧京都帝大学生YMCA会館の寮であった。
外観はモルタル塗りで木部を貼りつけた意匠でハーフディンバー(木骨様式)風になっている。
大学YMCA会館としては、現存最古の建物である。
6・藤井斉成会館有鄰館第一館 (京都市登録文化財) -京都市左京区岡崎円勝寺町-
1926(大正15)年、武田五一の設計。
兼松江商や山陽紡績の創立や役員、衆議院議員を務めた藤井善助が収集した中国美術工芸品(青銅器、陶磁器、仏像彫刻、磚石(中国漢代の建築用煉瓦)印璽、書蹟、絵画など)を展示した私立美術館。
玄関 |
7・旧京都中央電話局上分局 (京都市登録文化財) -京都市上京区中筋通丸太町橋西南-
1923(大正23)年に上電話局として当時の逓信省技術師吉田鉄郎が設計し、清水組が施工した。
設計者・吉田鉄郎は、後の東京・大阪の中央郵便局を初め多くの優れた作品を手懸けた人。
鉄筋コンクリート造り一部3階建てで、ドイツ民家風の外観になっている。
建物はレストランに活用されたり、現在はスーパーマーケットが利用している。
8・エンマ[旧村井銀行祇園支店] (国登録有形文化財) -京都市東山区四条通大和路東入る祇園南側-
1924(大正13)年、たばこ王・村井吉兵衛が煙草専売後に興した村井銀行の祇園支店。
玄関扉 |
四条通り側の外観には4本のイオニア式のジャイアント・オーダー(複数階にわたる柱、梁)が付けられた鉄筋コンクリート造り2階建てで、屋上にはバラストレード(手すり壁)が設けられている。
現在はイタリア料理店の Cara Ragazza「カーラ・ラガッツァ」として利用されている。
9・レストラン菊水 (国登録有形文化財) -京都市東山区川端通四条上る-
1926(大正15)年に建築された。
瓦せんべい屋であった初代菊水館創業者・奥村小次郎が「ハイカラな西洋館でおいしい西洋料理を食べてもらいたい」と洋食屋を決意し、大正期の京都の新建築活動の規範的作品を作った。
昭和30年に屋号を「レストラン菊水」とした。
10・祇園甲部歌舞錬場 (京都市東山区祇園南側)
☆本館・別館・玄関 (国登録有形文化財)
正面入り口 |
「都おどり」の開催場所と舞妓、芸妓を養成する芸妓学校との2つの機能を持つ施設で、1913(大正2)年の建築である。
戦前は観劇等級に応じて玄関や待合が必要だったので複数の出入り口が設けられていた。
本館は舞台・客席を持つ大規模な木造建築物である。
別館は、一等客用に使われた。
左:別館 右:八坂倶楽部 |
左:本館 |
唐破風玄関の車寄せ |
☆八坂倶楽部 (国登録有形文化財)は最奥部に
あって最も庭園の眺めが良かったため特等客用
に使用された。
いずれも上質のヒノキ材を使った和風建築。
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